結婚相手に浮気をされたとき、慰謝料を請求できることがあります。こうした話題を聞いたことがあり、知っている方も多いのではないでしょうか。しかし浮気にも色んな形があり、常に請求できるとも限りません。
例えば浮気の原因がセックスレスにある場合はどうでしょうか。このときでも慰謝料の請求はできるのでしょうか。この問題につき当記事で説明をしていきます。
「セックスレスが原因の浮気」に対しても慰謝料請求はできる
慰謝料とは損害賠償の一種です。
精神的な苦痛という損害が生じたことにつき、相手方に帰責性(相手方に責任がある。相手方に責めるべき問題があるということ。)があるなど、一定の要件を満たせば、損害賠償請求として慰謝料を求めることができます。
その内容が浮気である場合も同様です。
浮気により精神的苦痛を当たられたことを立証して、慰謝料を求めることは可能です。ただしその行為が不法行為であると認められなければなりません。
相手方との協議で慰謝料の支払いに応じてくれれば面倒な証拠集めや立証などの作業は必要ありません。
しかしながら慰謝料の支払いに相手方が応じず、裁判にまで進んだ場合は、証拠を用いて浮気があったことの立証をすること、そしてその浮気が不法行為であることが示せなければなりません。
浮気が不法行為であると認められるには、一般的には当事者が婚姻関係にあることが求められるでしょう。配偶者以外と肉体関係を持つことで、婚姻生活上の利益を侵害するといえるからです。
ただ、その原因がセックスレスにある場合はどうなるのか。この問題に対して画一的な判断をすることはできず、個別に状況を判断する必要があります。
とはいえ基本的にはセックスレスが原因であっても、浮気をした事実が変わるわけではありません。そのため法定の離婚原因になるとともに、慰謝料請求を根拠付ける要因にもなり得ます。
浮気に対する慰謝料の相場は?
浮気を理由に慰謝料請求をする場合、どれほどの金額を請求することができるのでしょうか。
この点についても、基本的に当事者間の合意があれば大金を求めることは可能です。
しかし相手方が慰謝料の支払いについては認めているものの、金額設定に不満がある場合、やはり最終判断は裁判所で行われます。つまり法的な観点で、適切と思われる金額で落ち着くことになります。
金額を左右する要因は多数あります。浮気の頻度や期間、その他配偶者に対する精神的苦痛が大きくなるような事情がある場合には、請求額も大きくなります。
明確な基準はないのですが、同様の事案で過去にどれほどの慰謝料額になったのかをチェックすることで、おおよその金額を把握することは可能です。
浮気を理由とする慰謝料請求の相場としては、数十万円から300万円ほどといえます。
ただし、その原因を作ったのが自分である場合、その分を考慮して請求できる額が小さくなる可能性は十分に考えられます。その原因がセックスレスである場合でも同様です。
長期に渡りご自身がセックスを拒否し続けており、それを理由に浮気をした、セックスレスにならなければ浮気をしなかったという場合には、慰謝料額も少なく見積もられるかもしれません。
逆に、拒んでいたわけではなく結果的にセックスレスになってしまったという場合には、ご自身に帰責性はないとも考えられます。そうして一方的に相手方に問題があると評価されれば、慰謝料額も比較的多く請求できるかもしれません。
浮気を理由とする慰謝料請求ができないケース
浮気をされても、絶対に慰謝料請求ができるというわけではありません。
例えば、ご自身としては浮気をしたことの確信を得ていたとしても、その証拠を出せないのであれば慰謝料の請求は難しくなってしまいます。裁判で慰謝料の請求をするのであれば、浮気をしたことを、証拠を用いて裁判官に示さなければなりません。
また、相手方に帰責性がない場合にも慰謝料を請求できません。
例えば会社の同僚、友人など、他人から強要されて風俗に行った場合にまで責任があるとは言い難いでしょう。何をもって浮気と捉えるのか、という問題でもあります。自ら進んで風俗に行ったとしても、それが1回限りなら法律上は浮気(不貞行為)と評価されない可能性があります。
すでに夫婦関係が破綻していた
以上のように、浮気があっても慰謝料の請求ができないケースはいくつかあります。
「セックスレスが原因で、すでに夫婦関係が破綻していた」と評価されるケースでも同様に慰謝料が請求できない可能性が高まります。
そもそも浮気に対して慰謝料が請求できるのは、夫婦関係を維持する利益の存在が前提として必要です。
そのためセックスレス、その他何らかの原因ですでに夫婦関係が破綻していると評価されてしまうと、慰謝料の請求は難しくなります。
夫婦関係の破綻を思わせる要因にもいろいろあり、裁判上はそれらが総合的に評価されます。要因の1つには「別居」が挙げられます。すでに夫婦が別居をしており、その期間も長く、すでに夫婦のような関係性にないと評価されれば、浮気があっても慰謝料は受け取れないでしょう。
セックスレスが原因の浮気でも離婚事由になる
慰謝料の請求だけでなく、浮気を理由に離婚をすることも可能です。
ただしこのときの浮気は「不貞行為」に該当する必要があります。不貞行為とはつまり、配偶者以外との性行為のことです。
「配偶者以外とデートをした」という場合、一般的には浮気と捉えられるかもしれませんが、法律上の不貞行為とまでは評価されない可能性が高いです。結果、相手方の同意がなければ離婚は成立させられなくなります。
セックスレスが原因で離婚を請求されることもある
セックスレスの場合、相手方から離婚を請求されてしまうこともあります。
そしてセックスレスを理由に、裁判上の離婚が成立することもあります。
この場合は不貞行為があったことを理由にするのではなく、民法上、離婚ができる事由として規定されている「婚姻を継続しがたい重大な事由」への該当が理由となります。
もちろん、セックスレスであれば常にこの事由に当てはまるわけではありません。
しかし、「結婚をしてから一方が性交渉を拒み続け、それが数年間続いた」といった事情がある場合には、離婚事由として認められやすいです。
拒んだ理由が病気や年齢にあるのなら問題ありませんが、正当な理由なく性交渉を拒み続けていると離婚理由として認められる可能性があることには留意しないといけません。